──全力を注ぎ込んだそれは、危険物と

 ──全力を注ぎ込んだそれは、危険物と化していたのだ。自分が持つ力の大きさを改めて知り、何故か無性にむなしくなった。しかし、すぐに気を取り直して、【白龍】を構える。無全力を注いつものように左手に。そして、再び戦いへ参戦した。飛び散るのは青みがかった血。サキカの刀の振る速度が速いためか、純白の【白龍】は汚れることはない。しかし、サキカ自身はと言うと、魔物の血を大量に浴びて、ローブも髪も、顔や手までもが赤紫色に染め上げられていた。(なかなか減りませんね……)サキカはちらりと横目でガイアを見た。息を切らし、汗だくになりながら大剣を振るう姿が目に入る。思わず舌打ちをしそうになるような苛立ちが込み上げてきた。──隊員たちは、未だに駆けつけてこない。それよりなにより、サキカは自分にたいして苛立ちを感じていた。──この状況にも関わらず、全力で戦おうとしない自分に。その苛立ちは殺気となり、周りにいた魔物達は恐れ慄いて数歩後ろへ退いた。その時────、ガイアが右上段からの魔人の攻撃を、避け損ねた。「ガイア!!」サキカは叫んだ。「っ――……!」ガイアは悲鳴を押し殺し、どうにか数十m後ろへと退避したものの、その顔色は青白い。攻撃を受けたのは左肩。それは、ガイアの利き腕だ。「ぐっ……」痛みで握力が失せたのだろう。ガイアは左手に握っていた大剣を落としてしまった。右手で左肩を押さえ、そのままうずくまる。サキカは慌てて駆け出した。魔力ももう底をついてしまったのだろう。魔封具であるブレスレットを外せば、押さえ付けている分の魔力を使えるはずだが、ガイアはあまりの痛みにそこまで頭がまわらないらしい。(ですが何故……?)ただの攻撃であれば、ガイアなら痛みに堪えれるはずだ。なぜなら、炎帝であるガイアは、サキカと同じように──否、サキカよりは少ないが、これまで何度も怪我をしてきており、痛みに慣れているために多少の痛みならばこんなに痛がるはずがない。だとしたら──(あれは、ただの攻撃ではなかった……?).